映画「LOGAN/ローガン」よ、またその展開か(ネタバレあり)

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ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの最期を描く作品ということで、熱心なファンではないものの一応映画版は全シリーズ観てきた者として、ソファの背もたれを一段階起こす程度には姿勢を正して視聴しました。 

ここで記憶にある中のウルヴァリンの主観的時系列に沿ったまとめ

  • 南北戦争時代以前にほぼ不老不死の力を持つミュータントとして生まれ、数々の戦争に従軍したり(当日のヒロシマにも!)ミュータントチームの勧誘を断ったり改造手術を受けたり最愛の人を死なせたり記憶を失ったりする(ウルヴァリン:X-MEN ZERO及びX-MEN:ファースト・ジェネレーション)
  • あまり覚えてない。手すりを切ったら4つに分かれるはずのところが5つに分かれてた制作上のミスは覚えてる。マグニートーと戦った(X-メン)
  • これもあまり覚えてない。タイアップのマツダRX-8を勝手に持ち出したり自分の人生を捻じ曲げたストライカーと戦った(X-MEN2
  • 一番覚えてない。誰と戦ってたんだっけ?とりあえずまた好きな女が死んだ(X-MEN ファイナル・ディシジョン
  • 舞台は日本で、変装がばれたからと言って別に脱ぐ必要はないのに全員裸になって刺青をアピールするジャパニーズマフィアとか真田広之と戦ったりする(ウルヴァリン:SAMURAI
  • 人類滅亡に立ち会いかけたり過去に飛んで歴史改変して「新しい現在」に戻ってきたものの、改変された歴史の体験がないもんだからこれってつまり「新しい現在」の仲間からすれば、ウルヴァリンがある日突然何十年分かの記憶を欠落した挙句に「ジーン死んでた」「人類終わる」「ミスティーク顔違う」とか言い出すかわいそうな人になった感覚ですよね。まあ事情は皆わかってると思うけど。「教授:皆さん今日からウルヴァリンくんはちょっとおかしくなりますが温かく見守ってあげて下さい」(X-MEN:フューチャー&パスト
  • 歴史改変による記憶の空白期間の間に、悪そうな会社に捕まって人体実験されたりする。改造実験で得た金属骨格が歴史改変でなくなってるはずという矛盾を解決するためか(X-MEN:アポカリプス

とまあ長く生きた以上に数奇な運命に翻弄されたウルヴァリンの人生ですが、その有終の美を飾るに相応しい出来栄えだったと思います。

生き物のありようとして考えれば不老不死に近いウルヴァリンが家族の情愛などに対する感度が低いのもしょうがないことで、力を失い死にゆくことで新しい世界が見えてきた彼の最期のセリフは、同じようなシチュエーションで同じようなセリフを吐く他の作品のキャラクターのものより胸に迫るものがあります。いや、BIGBOSSの最期もよかったけど。 

そう言えばウルヴァリンのかっこよさの数パーセントはキレ顔のときに額から飛び出んばかりの力強い眉尻にあると思うんですが、そんな彼のジーンとミームを受け継ぐローラにもしっかり受け継がれていましたね。 

唯一残念な点を挙げるとすれば、一宿一飯の恩があるいい人たちを死なせて観客の敵愾心を煽る展開があることです。教授が殺されるのはもちろん意味があるので構いませんが、このモブキャラ達の死の無意味さよ。いくら悪玉に対するヘイトを高めたところで、結局そいつらを倒して終わる以上のことはできないわけだし、そのぶん苦しめて殺せばいいという話でもない。あ、もちろん最初から復讐をテーマに「胸糞からのカタルシス!」を目指した作品などでは別ですが。

これは他の作品でもよくあることなんですが、問題はまったく同じことを「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」でもやったばかりなこと。一宿一飯と服をくれたばかりか洗面台を壊しても怒らなかった老夫婦のことです。いや作品内時系列では何十年も前のことかもしれませんが。

なのであの牧場一家死亡フラグをビンビンに立て始めたときは「いい人そうに見えて実はスパイ」か「今度はうまいこと生き残る」と思ってたんですけどねえ。一応ウルヴァリンは先を急ごうとするけども、あとで「最高の夜だった」とまで言って死ぬことになる教授に宿泊の提案を飲ませるのがずるいというか。それで許されるつもりか。今後このような演出は断固拒否したいところです。